中小企業の場合、経営者のご子息が跡を継ぐのが一般的です。しかし、日本では出生率が下がり続けており、ご子息がいない経営者もいらっしゃいます。また、仮にご子息がいたとしても、跡を継いでくれない場合が増えております。
およそ3社に2社は経営者に跡継ぎがいない状況が生まれつつあるのです。これが大げさな数字ではありません。
経営者自身も、このような経済状況では、無理強いをしてまで子息に継がせたくないと思っているかもしれません。
かつては「企業30年説」が注目されていましたが、現在では常に変革していかないと、30年どころか10年も継続しない時代になっています。後継者は創業者以上に苦労する可能性があります。
創業者は自分の得意分野を活かして会社を立ち上げるケースが多いわけですが、これは創業者ならではの強みであると言えます。もちろん、親を超える優秀な2代目もたくさんいますが、昨今の厳しい経済状況下で、経験もなく、好きでもない仕事を継ぐことは、ある意味で酷なことかもしれません。
創業者に跡継ぎとなる子息がいない場合は、社員を後継者に指名するという選択肢もあります。ただ、これはそう簡単にはいかないようです。
社員が跡を継ぐとしたら、経営陣による買収という選択肢もあります。
このような場合、純資産1億円に、経営が順調なら営業権にも1億円なり2億円の現金を社員の方が出せるのかというと、難しい場合が多いのです。
また、社員が会社を継ぐ場合は、個人保証を誰が背負うのかという問題も深刻です。社長の自宅が担保に入っていることが多いのですが、この担保を誰が肩代わりするのか。その答えは容易には出ないでしょう。
さらに、後継者となる社員の資質も重要です。例えば、長年会社の発展に大きく貢献し、後継者はこの人という人材がいたとしても、そのような社員が経営者としての経験を積んでいるかというと、そうではないことが多いのです。極端な話、営業には卓越した手腕を発揮していても、決算書を見たことがないという方もいらっしゃるでしょう。しかも、創業者の片腕ともなると、年齢が創業者に近い場合がよくあります。実際に跡を継いで経営者になったとしても、数年くらいしか経営できないこともあります。
悲劇的なのは、創業者が亡くなったあとにその奥様が個人保証を負い、社員の方に経営を任せて倒産したケースです。奥様は創業者が築き上げてきたものを全て失うだけでなく、個人保証までかぶってしまいます。創業者の努力は一体何だったのかという話になってしまう。
逆に、社員が跡を継いだことで会社が大きく成長するケースもあります。そうすると、たとえ創業家が株を100%持っていたとしても、創業家の意向は反映されにくくなるでしょう。現経営陣には、「自分たちが会社を大きくした」という意識があるからです。そうなると、オーナーと経営陣との間に亀裂が生じ、事業にも悪影響が出ることがあります。
いずれにせよ、中小企業の場合は、創業家が跡を継がなければさまざまな問題が生じることが多いと言えます。
2011/5/31
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