変額個人年金保険

  変額個人年金保険の新たな価値を生かした相続対策について「極端なことを言えば、法定相続人の特定の一人であろうが、法定相続人以外であろうが受取人と指定すれば現金を残せることにある。」という。

 例えば、被相続人(父)には正妻のほかに子供が居たり、若い愛人、あるいは世話になっている家政婦がおり、それらの人に何かしらの物を残したいと思ったとする。被相続人は高齢で生前自分の健康に不安を抱え財産の分配を心配していた。そこで、受ける保険会社のモラルリスク上問題がなく、変額個人年金保険に加入することができれば、それぞれにいくらかの財産を残すことができるというわけだ。

 受け取る側は「みなし相続財産」として相続税の対象とはなるが、前述した最高裁判決により、死亡保険金は特別受益者の相続分に当たらない。

 それではこういったケースの場合はどうであろうか。

 中小企業の社長である父親が、会社や従業員の行く末を案じ、後継者としている長男に会社株式とある程度まとまった運転資金を残したいと考えていたとする。

 会社の株式評価額が2億円、自宅の土地建物が3億円、有価証券・預貯金が1億円の計6億円の遺産がある。特に妻には自宅、長女・次男は金融資産を相続することとする。

 ここで変額個人年金保険を活用する理由は、社長(父親)が70歳で健康に自信がなくても、払込保険金と保険金が同額なので同保険にはほぼ加入できるためだ。

 具体的には、銀行から1億円借りた上で受取人を長男にした1億円の変額個人年金保険に加入する。こうすることで、相続税の支払いや長女・次男に対する代償分割(分割し遺産の代わりに現金で相当分を支払うこと)として現金を渡してもある程度まとまった「即効性のある」運転資金を残せる。

 もちろん、社長は遺言をしっかり残し、一次相続(社長死亡想定)では妻に法定相続分いっぱいに相続させるため株式を長男と妻で相続すること。二次相続(妻死亡想定)で完全に長男に株式を移すこと。また、240平方メートルまでの小規模宅地の8割評価減および死亡保険金控除500万円×4=2千万円の活用もしっかり活用する。

 ここで問題になるのが、「死亡保険金がいくらまで、あるいは総遺産に占める割合が何%までなら特別受益に当たらないのか」という基準だ。この基準については、前述の通り最高裁も具体的に示していない。

 しかし、保険を活用した相続対策に詳しい複数の税理士の話では、「総遺産6億円(銀行借入金と保険金は相殺)に占める保険金額は1億円÷6億円=16.7%。代償分割として他の兄弟に保険金の一部を渡せば、その比率は下がる。長男は会社の後継者ということで、他の兄弟とは明確に違う。この保険も会社や従業員のため後継者に株式を引き継がせるためのものと考えてもらえれば、到底容認できないほどの著しい不公平とはならないはず」という。

 変額個人年金保険は、後継者が決まっているような会社であれば、社長から後継者に対する資産移転の魅力的な一手段として活用できる。確かに、保険商品自体は、保障金額は払込保険料(払込金)と大差なく、据置期間が終わったら単なる年金になってしまう。これは、デフレが継続したり、運用に失敗でもされたら、年金でもらえる総額は減ってしまうことを意味する。しかし、このマイナスを上回るに余りあるメリットがあるのだ。

 

2010/11/24 

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