スムーズな事業承継 社長の心得7カ条

①相続は争うものと心得る

 通常、相続が始まるまでは「相続税をできるだけ安くしたい」という気持ちがあるが、いざ相続が始まってしまうと「少々の相続税などどうでもいい、それよりも自分の取り分を少しでも多く」ということに意識が集中してしまう相続人は多い。

 親族が争わないで済む円滑な相続の為には、何よりも遺言書の存在が必須となる。

②自社株は後継者に集める

 自社株を方々にバラまくと、もう一度集めるには困難をともなう。自社株を集め直すためには双方が納得いくだけのお金を積むしかなくなる。

 

③共同経営は難しい

 相続の時点では仲が良く「兄弟で共同経営を行っていく」というのも、できればやめたほうがいい。景気が良い時は問題なく共同で経営できても、景気が悪くなった時、さらには最悪廃業となったときなどは共同ではうまく乗り切れないことが多い。「共同経営するくらいなら、会社分割した方がまし」ということだ。

 

④有形・無形の財産を事前確認

 事業承継のために必要なのは、自社株だけではない。後継者と定めた人間には、事業用資産も継がなければならない。たとえば、土地が個人名義で建物が会社名義の場合、この土地を相続の遺留分に配慮して分割した場合などは、自社の社屋一つとっても経営者たる後継者が判断することができなくなる。

 このような場合、実務上相続後に売却するのが望ましい。相続後に売却した場合、相続に要した費用が経費として計上されるからだ。さらに、会社に売却すれば借金の利息を経費として計上することもできる。まさに一石二鳥と言えるだろう。

 相続というと、つい「財産目録」に載るようなものばかりを連想してしまう。だが、後継者たる相続人にはそれよりももっと大きな財産を残すことができることを忘れてはいけない。それは、アメリカのビジネススクールへの留学や、人脈を形成してやるなどといった、無形の財産だ。これは相続税がかからない上に、後継者にとって何より大きな財産となる可能性があるのだ。

 

⑤事業承継税制の利用を検討

 頭を悩ます問題の一つに、従業員の問題がある。たとえば事業承継税制を利用しようと考えた場合、一番ネックとされるのが「従業員の8割雇用」の問題。事業承継前と承継後で、従業員数を2割以上削減してはいけないというものだ。

 これは逆に考えれば、事業承継直前は出来る限りスリム化しておいたほうがよいということになる。特に、創業から勤めているような古参の従業員は、新しい経営者にとって重荷になることが多い。非常なようだが、先代の経営者が道筋を考えておく必要がある。

 

⑥自社株以外の財産を作る

 もし相続が自社株だけであり、複数の法定相続人の間で分けられるような財産がない場合は困ったことになる。遺留分の請求があれば、当然財産を分割しなければならないからだ。一般的には、自社株と同等の額の金銭を渡すことになるが、後継者の手元に現金がなければそれもかなわない。そのため、後継者には資金をためるように仕組みを作っておく必要がある。あらかじめ「これは相続用の資金」ということを後継者との間でよくよく確認しておくようにしたい。

 

⑦そもそも何を遺すかを考える

 何より大切なのは、遺したいのは自分の「会社」なのか「財産」なのかはっきりさせるということだ。それが「会社」ならば、ここまでに記した方法で事業承継を検討していく必要がある。しかしそれが「財産」だけというならば、無理に会社を継がせる必要はない。M&Aなどを視野に入れて総合的に考えていきたい。

 非上場会社の株価は、景気に遅れて推移するため、景気が好転した直後に安値となる。売るにしろ、譲るにしろ、毎年株価の算定を行って自社株の価格について把握しておくことも、事業承継のためには肝心である。

 

2010/10/5

 

相続事業承継


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